摩擦係数を特定する簡単な方法
コーティング加工を施した後に、締結部品の後続処理が可能な状態を保つことも大変重要になります。そのため、ヘルデッケのラボ、さらに中国、韓国および米国の3カ所の施設で継続的に摩擦係数試験を実施しており、ドルケンのこれらの技術センターでキスラーのANALYSEシステムが使用されています。このテストスタンドは、自動車業界や他の多くの分野で求められる仕様を満たす様々な摩擦係数試験を実施することができます。15年前から同社に勤務し、締結部品技術の責任者を務めるミヒャエル・シュテーラー(Michael Stähler)氏は、ラボ用装置、トレーニングと営業を担当し、お客様へのアドバイスも行っています。シュテーラー氏は次のように説明します。
「キスラーのテストスタンドのおかげで、トルクとプリロード力の関係を決定する摩擦係数を正確かつ確実に特定することができています。ここでひとつ注意しておきたいのは、お客様や国によって、好まれる摩擦係数の範囲が異なるということです。これらは潤滑の影響を受けるため、これによって全体像がやや複雑になります。自動車業界ではプロセスの効率化が進んでおり、測定技術に対して数々の課題が突きつけられています。しかし、キスラーのANALYSEシステムを使用することで、私たちは最大700rpmの予備締付けを求めるお客様の規格も問題なくクリアできています」
ミヒャエル・シュテーラー氏(ドルケンの締結部品技術の責任者)
締結部品と仕様に応じて、異なる速度による締付けや、鋼鉄、アルミニウムまたはCDC(カソードディップコーティング)の表面を備えた特定の基準部品に関する締付けなど、様々な試験手法を用いる必要があります。そのために、ある程度の柔軟性をもって使用できるシステムや、作業者の作業負荷を最小限に抑え、プロセスを簡易化するソフトウェアが必要になります。キスラーのEMEAねじ締結技術チャンネルマネージャーのオリバー・ヤコブ(Oliver Jakob)は、ANALYSEシステムのメリットについて次のように説明します。「着脱可能な締結部品の摩擦係数を特定するキスラーのテストスタンドは、多様なモジュールとコンポーネントから柔軟に組み合わせることができ、例えば異なる駆動装置を装備することも可能です。また、キスラーのソフトウェア「testXpert」には、定義済みの試験プロセスと自由に構成可能な試験プロセスのどちらも組み込まれており、ユーザフレンドリーな設計となっています」
キスラーの世界的な展開と評判の高さから、ドルケンはキスラーのANALYSEシステムを採用することを早い段階で決めていました。ドルケンのドイツ本社にあるテストスタンドは2015年と2019年に拡張され、米国には摩擦係数を特定するための第4の拠点が設置されました。「これにより、私たちは現在、当社のすべての技術センターで統一された試験を実施することができています。つまり、ここ本社で開発した試験方法を、キスラーのソフトウェアを介して、確かなプロセス信頼性をもってグローバルに展開できているということです」とシュテーラー氏は補足します。もうひとつのメリットとして、定期的に校正を実施することで、例えば基準部品を緻密に指定しているお客様の規格にも高い信頼性で確実に対応できることが挙げられます。シュテーラー氏が「表面(Surfaces)」作業グループの議長を務めているドイツ締結部品協会(German Fastener Association:DSV)などの団体は、各種の測定原理とのテストスタンドの比較可能性を評価するラウンドロビンテストも実施しています。
ANALYSEシステム:統一可能、効率的、モジュール式
「当社にある4台のキスラー製ANALYSEシステムは、私たちの国際的な位置付けを大きく向上させ、私たちとお客様に大きなメリットをもたらしています。高い測定周波数、卓越した分解能、直接評価などのメリットがあり、これ以外に望むものはほとんどないほどです。また、以前のソフトウェアバージョンからも含め、すべてのデータと測定値が保存され、追跡できるようになっています。このことは私たちだけでなく、コーティング関連企業とエンドユーザにとっても大きな安心材料となります。さらに、キスラーが提供している優れたサービスを世界中どこでも利用できるというメリットもあります」
どのようなトレンドがねじ締結技術の未来を形成し、市場は今後数年でどのように発展していくのでしょうか?シュテーラー氏は、より高速の締付けや複数のねじ締結など、自動車業界から課せられる試験要件の増加傾向を指摘するだけでなく、特定の素材の入手可能性といった要因に左右される別の展開も予測しています。シュテーラー氏は具体的な例を引き合いに出し、こう述べています。「締結プロセス時の締付けの超音波制御は、防食分野に携わる私たちにとってそれほど重要ではないものの、なかなか興味深い技術です。この手法では、超音波によって締結部品での実行時間の変化が測定され、そこからプリロード力が連続的に特定されます。ただし現時点では、このプロセスは、締結部品の頭部と端部の平行平面領域といった一般的な条件と関係しています」。さらに、オリバー・ヤコブが最後にこう付け加えました。「キスラーのANALYSEシステムに超音波信号を送ることはすでに実現できています。私たちは適切な計算機能を使用して、力センサで測定したプリロード力と超音波で測定した締結部品の伸びとの間に直接的な関係を確立することができます」