車両開発を成功させるためには、正確な測定データが必要になります。現実の世界で車両がどのように機能するのかを理解するために、エンジニアと開発担当者たちは一連の特殊な試験を実施し、タイヤ、ステアリングシステム、エンジン、ドライバー支援システムなどの挙動の最適化を進めています。その際に重要となるのが、トルク、速度、加速度、ホイールの耐荷重、動的キャンバー角などの測定量です。車両挙動に関する結論を導き出すためには、こうした数値を経時的に正確に記録する必要があります。テストトラックでもテストスタンドでも、センサやソフトウェアなどの測定ソリューションは、レーシングチーム、ドライバーや開発担当者が車両を最適化する際に大きな力となります。
測定技術を通じて世界中の車両開発を促進
キスラーの測定技術のスペシャリストたちは、高精度で堅牢なセンサ、カスタマイズしたシステムとソフトウェア、さらにソリューション一式を通じて、電気自動車や水素自動車の開発を進める若手のレーシングチームから、プロセスとデータ活用の最適化を目指す世界的な自動車メーカーまで、世界各地で革新的な車両の開発に挑む人々をサポートしています。
![Forzeが車両開発で採用した測定技術 Forzeハイドロジェンレーシングのレーシングカー「Forze IX」は、キスラーの圧力センサと測定技術を使用して開発されました。](https://kistler.cdn.celum.cloud/SAPCommerce_CMSGalleryStandard_720x480/measurement-technology-for-vehicle-development-at-forze_48425.webp)
イノベーションには精度の高い測定技術が不可欠
数十年に及ぶ経験を有するキスラーグループは、多種多様な開発作業に合わせてカスタマイズした測定技術を提供することができます。キスラーは大学、モータースポーツチーム、自動車業界のOEMと連携し、代替駆動システムや新しい車両設計、そしてとりわけ自動運転などのトレンドをサポートしています。車両開発に関しては、モータースポーツが最先端を行く傾向があります。例えばデルフト工科大学(オランダ)のForzeハイドロジェンレーシングチームは、キスラーの圧力センサや各種システムを活用して、水素エンジンのレーシングカー「Forze IX」から最高のパフォーマンスを引き出しています。また、アウグスブルク応用科学大学の完全電気駆動のレーシングカーや、シュトゥットガルト大学のグリーンチーム(加速性能の世界記録を樹立し、2022年の世界チャンピオン)はフォーミュラ学生レースの新記録を更新しましたが、キスラーのCorrevitセンサを駆使して測定したことでこの偉業を成し遂げることができました。
ホイールの回転を測定
2023年3月にハノーバーで開催された「Tire Technology Expo」で、キスラーは新しいホイール6分力計「RoaDyn Racing」を発表しました。このワイヤレスホイール6分力計はリムに直接取付けるタイプで、走行中にホイールと、特にタイヤに影響を与える力とモーメントをすべて測定することができます。このホイール6分力計を活用すれば、タイヤメーカーやモータースポーツチームはコース、車両ダイナミクス、天候やその他の影響要因に関してタイヤ性能を正確に分析し、最適化することができます。さらにこうした測定値から、トラクションだけでなく、摩耗に関しても情報が得られます。モータースポーツの場合は主にショートタームパフォーマンス(ベストラップを叩き出す数分間、レースで勝利するまでの数時間)が重要になりますが、量産車の場合は長寿命や数年にわたる信頼性が大きなウエイトを占めることになります。耐久性についても、路上のテスト走行(日本の革新的なサブコンパクトカーなど)、テストスタンドを用いたテストサイクルのどちらにおいても、キスラーのホイール6分力計 RoaDynは過去数十年にわたりレベルの引上げに貢献しています。
ビッグデータ:全体を見据えつつ、開発の効率性を向上
耐久性を把握するために必要な長期試験では、大量のデータが生成されます。そこに、定評あるjBEAM分析・可視化プラットフォームの特定用途向けの新しい「jBEAM Durability」があれば、全体像を把握しやすくなります。自動車業界大手のOEMと協力して開発したこのソフトウェアは、開発エンジニアが測定データを最大限に活用できるような柔軟性とスピード、そして効率性を備えています。車両コンポーネントとシステムを正確に検証するためにテストバージョンを使ってみたいとお考えの場合はぜひsales-software@kistler.comまでお問い合わせください。
車両の安全性:すべてをシングルソースで実現
1950年代に最初の衝突試験用ダミーが開発されて以来、様々な変化があり、車両安全技術の改良によって交通事故死者数は毎年減少傾向にあります。衝突壁、インダミーセンサ、エアバッグテストシステム、および2017年に社内開発されたTHORダミー(乗員拘束性能試験用モデル)を擁するキスラーグループは、車両パッシブセーフティ試験のワンストップサプライヤーとして、安全性試験の種類(衝突前、衝突中、衝突後)や使用するプロトコル(NHTSA、Euro NCAPなど)に限らず、多彩なソリューションを提供しています。例えば衝撃試験の様々な構造(前面、側面、ポール)、測定する身体の部分に応じてセンサを組込んだダミー、エアバッグやドライバー支援システムを試験するための特殊なシステム(ステアリングやペダルロボット)など、各種システムが揃っています。
車両試験と車両安全性試験の詳細についてはキスラーグループのウェブサイトでご覧いただけます。